あまくさ未来創造スクール第4期〈DAY.6〉

講義内容【地域活性化論④/子育て世代の移入とビジネスチャンス】
【ケーススタディ (子育て)】
日時2024年10月4日(金)13:30~16:30
会場熊本城ホール

今回は、熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長 金岡省吾教授、(株)ココママ 代表取締役 大島恵 氏、(一社)くま川スポーツアカデミー 代表 松嶋純也 氏を講師に迎え、「子育て支援」と「ビジネスの両立の可能性」、そして「コミュニティ」と「共助」について考察していきました。

主催者挨拶【熊本大学理事・副学長 大谷 順】

地域課題を解決するCSV、人材育成とビジネスの実装を目指す「未来創造塾」は、現在9地区にて実施しており、高校連携事業や都市圏企業との連携による越境学習事業等とも連動し、活動の幅を常に広げながら取り組んでおります。取り分け、高校連携に関しましては、講義を通じて高校生の地域愛着が醸成され、「将来は地元に帰ってきたい」、「地域外から地元に関わり続けたい」といった意識変容が起こりはじめていることを強く感じております。

こうした学生の意識変容を受け、熊本大学では、地域連携の新戦略として、中学校、高校、大学、社会人までの一貫型の教育改革として、新たな教育の場「共創学環」の設置を計画しております。

今後、産学官金の連携を更に強化し、地域社会の様々な課題解決に貢献し、社会にイノベーションを起こす人材を地域の皆様と共に育成してまいりたいと考えておりますので、関係機関の皆様には、より一層のご協力をお願いいたします。

講義/子育て世代の移入とビジネスチャンス
講師/熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長金岡省吾 教授

前回までの復習

地方創生は、一言で表現すると「人口減少」の歯止め。では、どうすれば人口減少に歯止めをかけることができるのでしょうか。

高校卒業後の若者が都会に移住する「社会減」が大きな要因であり、地域に触れ、将来帰りたいという意識を育むことが重要です。人口減少を防ぐためには、子育て世代の移入が鍵となります。千葉県流山市や長野県下條村のように、子育てしやすい環境を整える施策が効果を上げており、積水ハウスや旭化成などの企業も、子育て世代をターゲットにしたコミュニティ形成に着目し子育て世代の受け入れに成功しています。

こういった成功事例は大規模な施策転換や大企業が取り組んだから成功したという訳ではなく、地方公共団体や中小零細企業でも成功した事例はあります。

舟橋村~子育て共助のまちづくり~

公共投資による宅地開発が進む中、民間の住宅開発も活発化し、子育て世代を中心に人口が増加しました。しかし、安価な地価による一時的なブームであり、地価が均衡すると住宅開発が鈍化し、将来的には高齢化と人口減少が懸念されるようになりました。

そこで舟橋村では「子どもをもう一人産み、育てたい」と思える環境を整えるため、子育てコミュニティの形成を目指したプロジェクトを実施しました。このプロジェクトでは、既存の施設を活用し、母親同士が気軽に集まれるコミュニティを作り、子どもたちが公園の運営に関わる「園むすびプロジェクト」を通じて公園への愛着を育む取り組みが行われました。こうした“ゆるやかな”コミュニティ形成が、子育て世代の舟橋村への愛着や期待感、安心感を高め、新たな子育て世代の流入や出生率の向上に繋がりました。

「コミュニティが武器になる。」

行政や大企業の大規模投資によるハード整備が重要なのではなく、地域に住む人たちの関わりしろを慎重に整備していったことにより、“ゆるやかな”コミュニティが形成され、地域に対する思いを育て、人口減少に歯止めをかけた事例を紹介いただきました。

与えられるサービスではなく、共に協力し助け合う「共助」のまちづくりが地方創生には必要だと改めて感じた講義となりました。

講義/私の生き方
講師/(株)ココママ 大島恵 氏

大島さんは2019年にご主人の出身地である富山県魚津市に一家で移住され、同年に趣味であったマカロン作りを活かし、オーダーメイドのマカロン専門店ココマカロンを開業されました。このオーダーメイドマカロンが、冠婚葬祭の贈り物としてヒットし、国内のみならず国外への出品のお話が来るほど順調に売上を伸ばされているそうです。

しかし、現代社会ではママや女性が仕事と家庭を両立するのは難しく、特にフリーランスや起業家になるとその難度はさらに高まります。

また、男性と比べ、女性はライフスタイルにより生活が大きく変わることが多く、その悩みが尽きない状態となっていたことから、同じような悩みを抱える魚津市在住のフリーランスで子育てに励むママ、多様に働くママと女性がもっと暮らしやすく、もっと働きやすくなる社会を目指して活動する団体「ココママ」を立ち上げられました。

はじめに手掛けたマルシェがたくさんの来場者とともにマスコミにも多数取り上げられるなどの大反響で、活動1年目からマルシェを複数回開催したほか、フリーランスママの座談会や勉強会、ワークショップなど、数々の取組を通してママのコミュニティが形成され、今日ではより大きな広がりになっています。

「こんなコミュニティがある魚津に住んでみたい」

これらココママでの活動は、メディアを通じて広く報じられ、そのことが大島さんや自身が経営するココマカロンの認知度向上に繋がり、売上が上がったことで、ココママでの活動の幅が増えるという好循環を生みました。今後は、更に活動の幅を広げていくために、「ママと女性が輝ける街」+「子供を育てたい街」、50年後も子供が多く生まれ、女性たちが生き生きしている街を目指していきたいとおっしゃっていました。

自身の経験から、フリーランスのママたちが活躍できる場を作ろうと立ち上げた組織が、多くの共感を呼び、互いに助け合う「共助」を実践していくことで、新たな価値観、新たな働き方を創造している貴重な事例をご説明いただきました。手間とコストの面から避けられていたコミュニティ形成が、仕事に好循環をもたらしていった大島さんの事例は、地域ビジネスにおいて重要な視点であると感じた講義でした。

講義/スポーツを通じて元気な子供とまちを育てる~コミュニティ・共助が武器になる~
講師/(一社)くま川スポーツアカデミー 松嶋純也 氏

松嶋さんはJAPANサッカーカレッジを卒業された後、サッカーに関わる仕事をしたいという想いから、25歳でくま川スポーツアカデミーを立ち上げられ、現在、サッカーとダンスのクラブチームの運営の他体育教室や小学校のサッカー部のサポート、保育園の体育指導等をされており、会員数は565名になるとのことです。

松嶋さんが活動されている熊本県八代市でも年々出生数が減少していることから、自社事業の存続に危機感を覚えたことが未来創造塾へ入塾したきっかけであったと言います。松嶋さんが、解決したいと考えた地域課題は二つあり、一つ目は「学童保育の待機児童」、二つ目は「地域内で親子が過ごす機会の創出」です。

当時、くま川スポーツアカデミーでは小学校低学年の会員が少なく、今後の経営を考えると大きな不安材料であり企業課題でありました。会員数が少ない理由について調査し、考えたところ、八代市では共働きの世帯が多く、19時以降の練習が多かったサッカーやダンス教室への送迎への負担が大きいことに気づき、習い事と学童保育のコラボ事業を始めようと決意され、民間の学童保育事業に取り組まれました。

入塾中に取り組まれたこの新規事業は、大好評で今では新小学一年生の募集を始める前から、予約で募集枠が埋まってしまうようになりました。これは、他のやつしろ未来創造塾生たちの協力を大きいようで、夏休み中に開催する「収穫体験」、「スクールトレイン事業」、「天気予報による天気実験」等の多種多様な連携による、多くの体験事業の実施による部分も大きいと言います。

また、「地域内で親子が過ごす機会の創出」を目指した、イベントの企画運営も並行して行っており、無料ダンス教室、サッカー教室とマルシェ等を絡めたイベント「親子でホリデー」を開催することで、くま川スポーツアカデミーを知ってもらい、親と子の両方に興味を持ってもらうことで集客に繋げ、イベントの入場案内等で公式LINEグループに入ってもらい、一つのコミュニティを形成することで、以前まで広告にかけていた労力と費用の削減に繋がっているとのことです。この「親子DEホリデー」がイオン九州の目に留まり、新規テナントでの開講依頼を受け、新たなスタジオでの開講、集客に繋がりました。

松嶋さんは、八代市の子供達の笑顔をたくさん増やせたことが一番嬉しく思っています。自社だけでは出来なかったことが、多くの人たちに協力していただいたことで、こんなにも大きく、色々なことが実現できました。企業理念である「子供たちに 喜び 楽しみ 学びを」を大切に今後も頑張っていきたいです。そう語り、講義を終えました。

コミュニティを武器にしたCSV事例のご紹介を通じ、未来創造塾で知り合った仲間の協力で八代市の子供達の笑顔をたくさん増やすことに成功したと強く言われていたのが印象的で、塾生達の連携の強さを改めて感じる事のできた講義となりました。