講義内容 | 開講式 |
日時 | 2024年08月9日(金)13:30~16:30 |
会場 | 天草市信用金庫5階 大ホール |
主催者挨拶1【あまくさ未来創造スクール塾長・天草市長:馬場昭治】
本市では、人口減少、少子高齢化、後継者不足など厳しい状況が続いています。これは現象であり、課題でもあり簡単に止めることはできません。そのような中で、この天草を未来に向けてどう盛り上げていくか、残していくかは非常に大事なテーマです。
様々な事業者の方がこのスクールに参加いただき、この天草の課題を新しいビジネスにできないか考えてもらう機会になるかと思います。約8ヶ月間の学びが、来年3月の修了式で身を結び、その後の動きに繋がることを大変期待しております。
主催者挨拶2【熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長:金岡省吾】
熊本で未来塾(以下、塾)に取り組み始め、ここ4~5年で地域が大きく変化してきています。地域によって変化に差があるのも事実ですが、天草市は確実に1歩ずつ前に進んでいます。本日はこれまでの歩みを振り返り、今後ついて考え見つめなおす場にしてもらいたいと思います
見つめなおすヒントの1つ目として、先進地である和歌山県田辺市の塾を振り返ってみたいと思います。1期~3期は塾の基礎作りとしてPurpose(パーパス)。企業の存在意義は何なのか、それを武器にして塾生がどうしたら輝くのかそんなステージが1~3期でした。
田辺市は4期頃から塾生のPurposeを武器に塾生同士が各期や都市の人たちと繋がり始めることで塾生がアワードを取り始めました。天草は今期で4期目になりますので、次のステージを見据える時期になると思います。次を見据えての戦術、戦略はどうかといったヒントを本日の開講式を通して見つけられればと思います。
塾の可能性が2つ目のヒントになります。今までで、この塾をどう輝かせるかは見えてきたと思います
キーワードは3つ。「面、世代、距離をこえて」です。塾は非常に大きな可能性を持っています。長丁場となりますが、この塾を通して何を感じ、何を考えるのか。塾をきっかけにして小さなことからスタートしてみて下さい。
■来賓挨拶【 天草信用金庫 理事長:田中豊浩 】
第4期あまくさ未来創造スクールの開講式が盛大に開催されますことを、関係機関を代表して心よりお祝いを申し上げます。本日から始まる学びが、様々な気付きや新たな発想を得る機会になり、この経験が皆さんの成長と財産に繋がってくるものと感じております。
本スクールは持続可能な天草を創るうえで大変意義があるものであり、開講いただく天草市さまをはじめ、献身的にご指導いただく熊本大学の先生方には大変感謝を申し上げます。
本金庫としましても活気ある地域創生、次世代を担う人材育成のために積極的に後押しをしていきたいと考えております。
■オリエンテーション①~あまくさ未来創造スクールが目指すもの~
【熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長:金岡 省吾 教授】
私は、大学でランドスケープ(環境農学)を学んだあと、シンクタンクに就職し、多様な地域づくりに携わってきました。
しかし、立派な戦略・提案を行っても地域で実践できないとの事実にぶつかり始め、提案するだけでなく、動く仕組みを作ることが必要だと実感しました。その中で、富山大学に転身し、地域再生塾を大学内で執行実験を行い、その後,魚津市にシステム移転の実証実験を行ったのが「魚津三太郎塾」です。その後、そのシステムを富山から田辺市へとノウハウ移転し塾のシステムを発展させ、田辺市から熊本県へ波及しはじめ4年前に熊本大学にIターンし、現在に至ります。
今では、地域再生塾の修了生たち、地域課題に挑んでいる大人たち「ローカルイノベーター」が注目されるようになり、塾のシステム自体も高い評価を受けております。
例えば、中小企業白書で記載されている中小零細企業の生き残り策の一つとして、労働生産性や規模拡大ばかりでなく、企業が持続的に地域の課題解決に取り組む経営戦略を語れることが重要であり、そのために、支援機関と自治体が連携する経済モデルとして、動かすシステムが必要だと示されており、まさに、地域再生塾がその形の一つでないかと考えています。
また、新しい政策として農村RMOを展開する農林水産省も未来創造塾の取組に注目をいただくとともに、国土形成計画(第3次計画)に示されている、地域課題を解決する力、地域の愛着を高め,地方への新たな人の流れを創出するといった2つの地域力の醸成により、「地域を支える人材の確保・育成」等といった点は、未来創造塾を核とする地方創生の取組に合致しています。
同じく国土形成計画に示されている関係人口の創出につきましても、田辺市で実施されている越境学習事業「ことこらぼ」を今年度より熊本でも実施するなど、多くの都市圏企業が地域再生塾に興味を示します。
天草市では、天草高校と高校連携を実施されていますが、県内でも6つの塾が高校との連携事業を始め、計1,800人もの高校生に意識変容を行っています。このような連携を通じ、地域の「かっこいい大人」との関わりを作っていくことで、地域に興味・愛着を持つ学生を増やすことが重要だと考えています。実際に高校生は、地域課題解決するかっこいい大人の背中に反応し、地域の愛着を高め、地域に戻り活躍する、あるいは都会から地域に貢献する仕事に就くなど、先の国土形成計画に示された、新たな地方への人の流れを創出する可能性が潜在しています。
したがって、今後は、今まで以上に地域の力を強めることが求められます。地域課題を解決し、地域の魅力を高め、是非とも、人々の地域への愛着を高め、そして、若い人達にそれを伝播させ、地域に関わりたいと思えるようにしてください。
そのためには、地域の課題解決をビジネスで取り組む皆さんのような地域のプレイヤーが不可欠であるとともに、公務員や金融機関、高校の先生等の地域のプレイヤーを支える人材,さらには、地域のプレイヤーに域外から化学反応を引き起こす、都会に住みながら地域に関わる関係人口の方々、この3者が、人を変え、地域を変え、大きく時代を変えると思います。
時代を変える可能性のあるローカルイノベーターの卵である皆さんが地域には必要です。そのためには、小さなプロジェクトで良いので、皆さんが最初の一歩を踏み出し、動き始めることが重要です。
オリエンテーション②~なぜ未来創造スクールなのか~
【天草市産業政策課:井坂 雄兵】
天草市では全国平均より早いスピードで人口が減少しています。
人口減少は、生活関連サービスの縮小、空き家・空き店舗の増加、学校の統廃合、などの様々な地域課題を引き起こし、それらが積み重なることにより生活利便性や地域の魅力が低下し、さらに人口減少を加速させます。
これらにどう立ち向かっていくか方策を練る中で、当時富山大学で地方創生を実践されていた金岡教授が熊本大学へ着任されたことでご縁をいただき、ご指導、ご協力をいただいています。
金岡教授の指導の中で、特にこれからの時代に重要とされる地域課題をビジネスで解決することで地域と企業が共通の価値を創造するCSVという考え方を教わり、これを具体的に実践するために「産官学金」が一体となった支援体制を構築し、地域課題の解決に向けた人材育成事業「あまくさ未来創造スクール」が令和3年度にスタートしました。
これまで3期36名の修了生を輩出し、多様なローカルイノベーションが生まれています。
あまくさ未来創造スクールは、未来塾の先進地として全国から注目を集めている和歌山県の「田辺未来創造塾」をモデルとしながら、大きな1つのプロジェクトを目指すのではなく、小さくても地域に根差した沢山のビジネスを生み、繋がり、連鎖させることによって、面として魅力を高め合っていく、そういう地域づくりを目指しています。
一人一人が地域の主役です。
地域を巻き込み引っ張っていく憧れられる塾にしていきましょう。
オリエンテーション③~あまくさ未来創造スクール修了生の取り組み状況~
有限会社原田工務店:原田 良 様(左)
アマテ農園:林 雄介 様(中)
福連木とうふ:松本 美幸 様(右)
■塾生自己紹介
参加動機や抱負、企業情報や事業内容等について、各自1分で自己紹介を行いました。
■トークセッション
テーマ「これからの時代に求められる価値創造とは」
〈パネリスト〉
馬場 昭治(天草市長、あまくさ未来創造スクール塾長)
原田 良 様(あまくさ未来創造スクール1期修了生)
林 雄介 様(あまくさ未来創造スクール2期修了生)
松本 美幸 様(あまくさ未来創造スクール3期修了生)
〈コーディネーター〉
金岡 省吾 教授(熊本大学副学長・熊本創生推進機構副機構長)
〈金岡教授〉
1期~3期の修了生36名と4期生15名を含めて、地域の変化や今後のスクールへの期待を含めてコメントを頂ければと思います。
〈馬場市長〉
先ほど3名の修了生の方からも発表がありましたが、このスクールを通じて成長を実感しています。
このスクールの一番の特徴は「繋がること」です。
人口減少・少子高齢化の中で将来の商売が成り立たなくなっていく、未来が描けない方が多い現状です。しかしビジネスというものは課題の中にしかチャンスはないと思います。この課題というものに向き合い、どう解決していくか考える過程で新たなビジネスが生まれ、イノベーションが起こります。
一人で考えていてもイノベーションは起こりません。異業種の仲間と繋がり、協力し忌憚のない意見を言い合うことでイノベーションは起こっていくものと私は思っています。このスクールはそういう場所です。ぜひ皆さんはこの機会を楽しんで下さい。
この3年間で若い方が課題意識を持って動き始め、随分変わってきたと実感しています。先ほど「転換点」という言葉もありましたが、姉妹塾の田辺市は塾生が活発に行動することですごい変化をしています。ぜひ天草市は第二の田辺市になるように、皆さんと一緒に頑張っていきたいと思います。
〈金岡教授〉
先ほど個性的な発表をいただいた3名の修了生の皆さんにお聞きします。参加されての感想と、どう自身が変化し自社の事業に価値を付加されていったのか教えてください。
〈原田さん〉
講義では、多くの情報を得ることができるが知らない単語ばかりで難しかった印象です。CSVプランを作って自分で動いてようやく講義で習ったことを少しずつ理解し始めました。
1期生は個人それぞれ動いており個人の活動とは別に、新しく1期生みんなで別のことをやろうと集まり計画を立てているところです。
〈金岡教授〉
数年で理解し始めたということは、他の塾生の話でも聞きました。自ら動くことで、自分の言葉になり始めたのだと思います。
〈林さん〉
1期の原田さんや馬場市長、講師陣のお話でもありましたが、繋がることと、繋がり続けることの継続性が私は大事だと思っています。
もやもやしながら自分が目指している理想に進んでいないと思っても、色んな方と交流を続ける中で爆発力が生まれる瞬間があると信じながら、自分がやりたいことや、やらないといけないことを続けている状況です。
業種が違うと世界が違うので、異業種の方とお話をして忌憚のない意見を沢山聞いて、たまに怒られるということを続けているうちに、いつか天草から世界に通じるものが生まれるのではないかと信じ、日々取り組んでいます。
〈金岡教授〉
天草から世界はぜひ目指して頑張って下さい。
〈松本さん〉
私が皆さんに共有したいと思うことは、天草らしく、自分らしくというものを自分達が持って、それを周りに共有していけたらいいのではないかと思います。
課題解決を目指している塾ですが、天草市の良いところ、自分にしかない良さや強みにしっかり目を向けて、良いところを伸ばしていければ楽しく盛り上がっていく4期になると思います。
そのために自分らしさを出せる仲間の雰囲気づくりが大事です。この8ヶ月間自分らしさをさらけ出しながら様々な意見を遠慮せずぶつけ合いながら、天草市を前進させるために一緒頑張って下さい。
〈金岡教授〉
1期~3期までいろんな特色があり、連携やコラボを考えてもらいながら4期生のらしさを出してもらえれば思います。
■協力・後援機関からのエール
〈熊本県立濟々黌高等学校の生徒〉
総合的な探求の時間で「天草の地方創生~日本の未来」というテーマで、民間と行政からのアプローチというところに注目し勉強しています。
天草の自然や伝統を守っていきたいというところで、強い気持ちがありますので将来は何らかの形で天草に貢献できればと思っています。
本日の話を聞かせてもらい、私の知らないところでいろんな人が動いており、環境も整っていると分かったので私も積極的にチャレンジしていこうと思いました。本日はありがとうございました。
〈鍋屋准教授〉
熊本に出向した理由の一つに天草市の存在がありました。産業構造も人口規模も田辺市と近く、全国的に知名度のある天草でどのような地域づくりが行われているのか見てみたいという理由がありました。
様々な業種の方が集まるということはそれぞれ考え方や価値観も異なります。そんな皆さんが対話を重ねることで化学反応が起こる瞬間というものを田辺市で何度も見てきました。天草にも同様に可能性を感じています。ぜひ頑張って下さい。
地域課題は沢山あると思いますが、それをネガティブに捉えるのではなく、ポジティブ(チャンス)に捉え、小さいことでもいいのでチャレンジしてみたらそれがどんどん大きくなってくると思います。田辺市の塾生もやり続けることでいろんな賞が取れるようになり、やり続けることが重要なのだと気づかされました。
やり続けるためには、手段ではなくそれを行うことで会社が何を目指しているのか、なぜ地域課題に取り組むのか本質的なところにたどり着いたらいいなと思っています。
〈金岡教授〉
第4期、第二ステージを見据えて受講生へエールをお願いします。
〈田中理事長〉
こういった異業種が集まる会はなかなかありません。それぞれが切磋琢磨しながら頑張ってもらいたい。事例発表を行った修了生の皆さんはスモールビジネスそれぞれが繋がり、様々な事業者の方と連携しながら頑張っておられ感動しました。
15名の受講生の皆様については、自己紹介を聞きながらそれぞれが明確なビジョンを持っていると感じたところです。
〈大事にしてもらいこと〉
・一つ目が新たな価値を生むためのビジネスとしての想い、熱量、行動力
・共感、つながり、人を巻き込むこと
関係機関として、オール天草として皆さんをバックアップさせていただきたい。未来創造スクールを天草モデルとして進化させていってもらいたいと思います。
〈金岡教授〉
それでは最後に馬場市長からスクールを核とした施策の展開と次のステージを見据えて総括とエールをお願いします。
〈馬場市長〉
あまくさ未来創造スクールも4期目に入り嬉しく思っております。高校生にスクールと同じような学びを行い高校生の意識変化を行ってきている中で、中学生にも同様の学びを広めることで、地域の魅力を知って成長していってもらいたいと思います。
地域を良くするのも悪くするのも「人」しだいです。地域を良くしていく「人」を育てていくことが行政の役割であり、人が育つ環境を多く作っていきたいと考えております。
また、関係人口を増やす取り組みとして今年度から取り組み始めた越境学習「ことこらぼ」についても、拡大を目指し知識や技術をもった外の方々と地域内の事業者がコラボできる取り組みに力を入れていきます。とにかく前を向いていきましょう。未来を信じて頑張っていただきたいと思います。
■閉会【天草市経済部長:鶴田 明久】
本日の開講式を終えて、本事業への決意を新たにされていることと思います。既に堂々と自己紹介をされている皆さんの姿を見て感心しておりました。来年3月までと、長期間となりますが4期生一丸となって頑張っていただければと思います。
本市では、持続可能な天草市を築くために様々な取り組みを進めておりますが、行政だけでできるものではありません。皆さんのように志の高い民間事業者の方と行政が力を併せていくことが今後の天草市の未来を作っていくものだと思っております。
皆さんにとって約8か月間の学びが実り多きものとなりますように、行政として精一杯支援を行っていきます。それぞれが天草の将来を担っていくという想いを胸に講義に臨んでいただければと思います。期待しております。